ナンバンギセル

一般的には珍しい植物ですが、山野草や古典植物ファンにはポピュラーな秋の植物です。

 

名前の通り、花が煙草を吸う「キセル」に似ているからついた名であることは容易に想像できます。

特徴は、必ずススキと一緒に存在しています。単独で見ることはまずありません。なぜならススキに宿っているからです。単刀直入に表現すると寄生植物だからです。

 

オシャレに育てるなら背丈の低い屋久島ススキ、特に矮性の株に寄生させると、ススキより花が上にでてきますので、花姿がはっきり見えて素敵です。でも本来ススキに寄り添う植物であることをより強調させるなら、ふつうのススキをちいさめの株で小さめの鉢で持ち込んで背丈を数十センチに抑えたところで共生させると、とても愛らしく見えてきます。

これを十五夜に飾ると日本の侘び寂の世界となるわけです。

 

残念ながら、育ったものを組み合わせて、そのような形にできないのが生き物の難しさなのですが、生産者はこれを1年弱程計画して作ります。ススキを準備し、株の本数や大きさを計算して栽培用の鉢に植えこみ、春の彼岸の頃、ナンバンギセルの胞子(種)をぱらぱらとススキの根元に散らします。完成したら化粧鉢に植え替えます。

 

思うような仕上がりになるかならないかは、生産者の経験から裏付けられた腕の見せ所となります。

 

ちなみに花が終わると花の中に胞子(種)ができ採種できますが、放っておいても自然に落ち、毎年花は楽しめます。早ければ9月初旬から、気温や条件や運がよければ12月下旬ころまで断続的に花が楽しめます。

 

当社でも、毎年恒例で取り扱います。このために年間を通して屋久島ススキが市場に出回ると必ず仕入れるようにしています。揃えておくと必ずと言っていいほどセットで売れますから売り上げ増につながるのです。用意周到大事です。