盆の上に自然を表現するのが盆栽の基本ですが、時に、その自然を強制的に作ることは少なくありません。むしろ強制や矯正する技術を凝縮して「自然」を作り上げる盆栽が多いのが実情です。
自然の素材をそのまま「小さく」表現できるように利用できれば理想的なのでしょうが、そのような素材に巡り合うことは本当にまれなことですし、作ることの喜びも盆栽の楽しみの一つでもあります。
本当に盆栽が好きな方は、完成品を集めるよりも、完成までの過程を楽しまれます。そのために枝に違う枝を接いだり、幹に新しい枝を接いだりして、しかも幹本体は杜松で枝はすべて真柏に作り上げることもあります。
画像の五葉松は「取り木」という手法で、大きな木の枝の途中から根を出して切り取り、小さな盆栽を作る作業中です。木の皮を剥いで水苔を巻き、ここではその部分に育苗ポットを留めて用土を入れて1~2年待ちます。木の皮を剥いだ部分、つまり育苗ポット内部に根が出てくると、その根の下からノコギリで切り離し小さな鉢に植え替えます。
全体的には樹形が面白くないが、葉性が良く、部分的に取り木することで良い樹形になりそうな場合に採用される手法ですが、この五葉松は「九重」という品種で葉が短いのが重宝されます。
80㎝ほどの樹高の木ですが、すでに過去にも取り木された痕跡が数か所見られます。
山にある苗木をそのまま鉢に留めても盆栽になりますが、こうして手間と年数をかけて作るのも盆栽です。奥深いですね。